贈り物手帖
「アマビエ」とは、江戸時代から伝わる九州の熊本を発端とする妖怪の類とされています。当時の瓦版によると、毎夜海に光るところを見つけたため、役人が確かめに行ったところ、アマビエという妖怪が現れ、『今年から6年間は豊作に恵まれるが、同時に疫病も流行る。私の姿を絵に写し公開しなさない』と消えていったといいます。現在ではアマビエは疫病退散の妖怪として全国に知られるようになりました。同地域で知られる三本足の妖怪「アマビコ」との類似点に関して、アマビエとアマビコは同一の存在という専門家もいますが、真偽の程は分かっていません。
実はアマビエのような、いわゆる『妖怪』というのは世界でも奇異であり、日本の伝承文化が生んだ独自の産物とされています。日本は昔から文字文化(識字率)が発達していたため、アマビエのような妖怪が多数生まれる江戸時代には、民間でも半数以上が読み書きができ、武士にいたってはほぼ100%の識字率を誇っていました。このことから、日本では数百年前の御伽噺や民話・説話が現代に至るまでほぼ正確に伝承されている背景があり、世界とは一線を画す妖怪物語が多数今に残存していると考えることができます。
世界ではアマビエのような疫病退散の存在はどのような形となっているかというと、例えばエジプトでは女神セクメト、中国では瘟鬼(おんき)などが疫病退散の神として挙げられます。その多くは当初は疫病を広める邪悪な神や鬼、悪魔の類でしたが、彼らを祀ることによって疫病退散を祈る流れに変遷していきました。
2020年1月から世界で猛威を振るう新型コロナですが、それを機に疫病退散のアマビエが世界で注目されているのをご存知ですか。アメリカ、中国、ベトナム、タイ、フランスなど各国でニュースに取り上げられ話題となっています。ロシアではアマビエのマトリョーシカが登場するほど。新型コロナの終息を願う世界中の人々が日本の妖怪物語に共感してくれるのは、日本人として嬉しいものがありますね。
当サイト「毛利達男の名前の詩」では、墨彩絵師の毛利達男が筆を下ろしたアマビエの絵をダウンロードいただくことができます。独特の世界観と妖怪という奇怪な物の怪でありながらも、どこか愛嬌のあるタッチは、自室に飾ると不思議と愁眉を開くことができます。是非一枚お手元に置いてみてください。
ダウンロード(PDF)毛利達男のアマビエぬりえからオリジナルアマビエができあがりました。