贈り物手帖
栃木県の名前の詩
今もなお「東照大権現」として信仰を集める徳川家康が日光で「神」になった理由。それは源頼朝を尊敬する家康が、源頼朝をはじめとする東国の武士たちの信仰を集めていた霊場「日光山」の衰退を嘆き、再興こそが家康最後の仕事であったからだと言われています。
家康と側近の天海上人は江戸の都市計画に陰陽道や風水を徹底的に取り入れ、江戸城から北極星の方角(真北)にあった日光山を重要視します。ちなみに古代中国で宇宙を支配する神こそが北極星とされていました。日光東照宮の真上には常に輝く北極星を確認できます。
家康亡き後、信長も秀吉も本格的には成し遂げることが出来なかった「神格化」を天海上人と2代・3代の将軍たちは成し遂げていきます。2015年4月にはそんな家康の400回忌を迎えました。
イギリス人のデービッド・アトキンソン氏は10数年前までゴールドマン・サックスの金融マンでしたが、小西美術工藝社の社長に就任します。軽井沢の別荘の隣人が先代の社長だったという縁で助けを求められてのことでした。
小西美術工藝社は381年も続く東照宮の造営のためだけに始まった会社です。日光東照宮の漆塗り、彩色や飾り金具を主としていますが、明治以降は社寺などの伝統的な建築、特に国宝や重要文化財などの修繕・補修なども専門としています。日本の文化財装飾の職人の4割が小西美術工藝社の職人です。
助けを求められ経営の建て直しにあたったアトキンソン氏。今では日本の国宝や重要文化財の修復に邁進するなか、日本の文化財政策・観光政策の専門家として国に提言をするほど。日光東照宮は1997年から2024年まで大修理中です。現在はアトキンソン氏の陣頭指揮で修繕・修復され、美しさを取り戻しています。
私たち佐志生工芸村のある大分県臼杵市佐志生にゆかりのある三浦按針(ウィリアム・アダムス)は家康の外交顧問として、また後には旗本として活躍しましたが、彼もまたイギリス人でした。
400年の時を超えて、二人のイギリス人が家康に尽くしているのです。