「このアパート、もう限界かもしれない」
築35年の1Kアパート。家賃は安いけれど、古い。水回りは特に古い。
浴室には、シャワーカーテンすらありません。シャワーを浴びるたびに、脱衣所が水浸しになります。バスマットはすぐびしょびしょ。床を拭くのが日課です。
29歳、都内で一人暮らし。給料は決して高くないので、家賃の安さは重要です。でも、毎日の風呂上がりの床拭き作業が、地味にストレスでした。
「引っ越すしかないかな」
でも、引っ越し費用を考えると、簡単には決断できません。敷金、礼金、引っ越し代。少なくとも30万円はかかります。
ある日、友人との会話で、何気なくこの悩みを話しました。
「シャワーカーテンつければいいじゃん。ダイソーに売ってるよ」
「え、ダイソーに?」
「うん、300円とか500円で売ってる。突っ張り棒と組み合わせれば、簡単に設置できるよ」
その言葉が、私の生活を変える第一歩になるとは、その時は思ってもいませんでした。
たった数百円のシャワーカーテン。このシンプルなアイテムが、私に「小さな変化の積み重ね」という、人生を変える考え方を教えてくれたのです。

ダイソーでの出会い
半信半疑の買い物
翌日、仕事帰りにダイソーに立ち寄りました。
本当にシャワーカーテンなんて売っているんだろうか。あったとしても、100均のシャワーカーテンって、すぐ破れたり、カビだらけになったりするんじゃないだろうか。
そんな疑念を抱きながら、店内を探しました。
ありました。浴室用品コーナーに、シャワーカーテンが何種類も並んでいます。
サイズは、130cm × 150cmと、180cm × 180cm。価格は、小さい方が330円、大きい方が550円。
デザインも様々です。無地の半透明タイプ、白いタイプ、柄入りのタイプ。海の生き物が描かれたもの、シンプルな幾何学模様のもの。
「これ、本当に使えるのかな」
手に取って、素材を確認しました。ビニール製で、思ったより厚手です。少なくとも、すぐに破れそうな感じではありません。
「とりあえず、買ってみるか」
無地の半透明タイプ、180cm × 180cmのものを選びました。550円。
それから、シャワーカーテンを吊るすための突っ張り棒も探しました。こちらは110円。浴室の幅に合わせて、伸縮できるタイプです。
合計660円。これで問題が解決するなら、安いものです。
レジで支払いを済ませ、帰宅しました。
設置の簡単さに驚く
家に着いて、早速設置してみることにしました。
まず、突っ張り棒を浴室の入口に設置します。浴室の壁から壁へ、ちょうど浴槽と脱衣所の境目の位置です。
突っ張り棒を伸ばして、壁に押し当てる。バネの力で、しっかりと固定されました。
「おお、意外としっかりしてる」
次に、シャワーカーテン。上部にリングを通すための穴が、等間隔で開いています。でも、リングは付属していません。
「あ、リング買い忘れた…」
でも、よく見ると、家にあるS字フックが使えそうです。キッチンで使っていたS字フックを8個持ってきて、カーテンの穴に通し、突っ張り棒に引っ掛けました。
完成。
設置時間、わずか10分。
シャワーカーテンが、浴室と脱衣所を仕切っています。半透明なので、圧迫感はありません。でも、水はしっかり遮ってくれそうです。
「本当にこれで大丈夫なのかな」
半信半疑で、試しにシャワーを浴びてみることにしました。
初めてのシャワー
シャワーカーテンの内側に入り、カーテンを閉めます。少し狭く感じますが、許容範囲です。
シャワーを出しました。
水が飛び散ります。でも、今日はシャワーカーテンがあります。水は、カーテンに当たって、浴室内に落ちていきます。脱衣所には、一滴も飛んでいきません。
「すごい…」
当たり前のことなんですが、感動しました。
今まで、毎日床を拭いていたのは何だったんだろう。たった660円で、この問題が解決するなんて。
シャワーを浴び終わり、カーテンを開けて脱衣所に出ました。
バスマットは、濡れていません。床も、乾いたままです。
「拭かなくていいんだ」
この些細なことが、こんなに嬉しいなんて。
その日から、私の風呂上がりの床拭き作業は、なくなりました。


小さな変化がもたらしたもの
生活のストレス軽減
シャワーカーテンを設置してから、毎日の入浴が少し楽しみになりました。
以前は、「シャワーを浴びたら、また床を拭かなきゃ」という憂鬱な気持ちがありました。特に疲れている日は、風呂に入ること自体が面倒に感じることもありました。
でも、今は違います。シャワーを浴びて、タオルで体を拭いて、服を着る。それだけ。床拭き作業がないだけで、こんなに気持ちが楽になるなんて。
小さなストレスでした。でも、毎日のことなので、積み重なると大きなストレスになっていたんだと、なくなってから気づきました。
さらに、予想外の効果もありました。
シャワーカーテンがあることで、浴室内が暖かくなったのです。
以前は、脱衣所と浴室の間に仕切りがなかったので、冬場は浴室が寒く、脱衣所も寒い。ヒートショックのリスクもありました。
でも、シャワーカーテンが仕切りとして機能することで、浴室内にシャワーの熱気がこもり、暖かくなりました。
「これ、予想外のメリットだ」
660円の投資で、ストレス軽減と防寒効果。コストパフォーマンスが高すぎます。
「小さな変化」への気づき
シャワーカーテンの成功体験は、私に重要な気づきをもたらしました。
「小さな変化でも、生活は大きく改善できる」
今まで、私は「この古いアパートが嫌なら、引っ越すしかない」と思っていました。問題を解決するには、大きな決断と、大きなお金が必要だと。
でも、違いました。
大きな変化は必要ありませんでした。小さな工夫、小さな投資で、不満は解決できたのです。
「他にも、こういう小さな改善ができる場所があるんじゃないか?」
この問いが、私の生活を変える旅の始まりでした。
そして、私は再びダイソーに向かいました。今度は、明確な目的を持って。
「このアパートを、もっと住みやすくするための、小さな改善アイテムを探そう」
100均アイテムで変わる生活
キッチンの改善
まず手をつけたのは、キッチンでした。
1Kアパートのキッチンは狭く、収納も少ない。調理スペースもほとんどありません。料理をするたびに、「狭い、使いにくい」とストレスを感じていました。
ダイソーで見つけたアイテム:
1. 突っ張り棒と S字フック(各110円)
シンクの上のスペースに突っ張り棒を2本設置し、S字フックでお玉やフライ返しを吊るしました。今まで引き出しに入れていた調理器具が、手の届く場所に。取り出す手間が省けました。
2. 冷蔵庫収納ケース(110円 × 4個)
冷蔵庫の中が、いつもごちゃごちゃしていました。奥に何があるか分からず、賞味期限切れの食品を発見することもしばしば。
透明な収納ケースで、野菜、調味料、作り置きおかず、飲み物、とカテゴリー分けしました。冷蔵庫を開けたとき、一目で何がどこにあるか分かるようになりました。食品ロスも減りました。
3. 吸盤式タオルハンガー(110円)
キッチンにタオルを掛ける場所がなく、いつも適当な場所に置いていました。吸盤式のタオルハンガーを冷蔵庫の側面に取り付けたことで、タオルの定位置ができました。
4. 水切りラック(330円)
狭いシンクで食器を洗うと、洗った食器を置く場所がありませんでした。シンクの横に置ける折りたたみ式の水切りラックを購入。使わない時は畳んで収納できるので、狭いキッチンに最適でした。
5. 珪藻土コースター(110円 × 2個)
洗剤やスポンジを置く場所が、いつも水浸しでヌメヌメしていました。珪藻土コースターを敷くことで、水分を吸収してくれて、いつも清潔に保てるようになりました。
これらの合計:1,100円。
たった1,100円の投資で、キッチンは劇的に使いやすくなりました。
料理をする気持ちも変わりました。以前は「狭くて使いにくいキッチンで料理するのは面倒」と、コンビニ弁当で済ませることが多かったのですが、キッチンが使いやすくなってから、自炊の頻度が増えました。
健康的になり、食費も節約できる。良いことづくめです。
玄関の改善
次は、玄関です。
狭い玄関には、下駄箱もありません。靴は、玄関の床に並べるだけ。5足も置けば、もういっぱい。見た目も悪いし、湿気もこもります。
ダイソーで見つけたアイテム:
1. シューズハンガー(110円 × 3個)
靴を壁に吊るすハンガーです。突っ張り棒と組み合わせて、玄関の壁面に設置しました。よく履く靴3足を、浮かせて収納。床のスペースが空き、玄関が広く感じられるようになりました。
2. 消臭剤(110円)
靴を壁に吊るすことで、風通しが良くなり、靴の臭いも軽減されました。それでも気になるので、炭の消臭剤を置きました。
3. 玄関マット(330円)
今まで玄関マットがなく、床がすぐ汚れていました。洗える玄関マットを敷いたことで、見た目も清潔感もアップしました。
4. 鍵フック(110円)
いつも鍵をどこに置いたか分からなくなり、出かける前に探し回ることがありました。玄関ドアに鍵フックを貼り付け、鍵の定位置を作りました。もう探す必要はありません。
合計:770円。
玄関が整理され、出入りがスムーズになりました。帰宅した時の第一印象も良くなり、「家に帰ってきた」という安心感が増しました。
居室の改善
メインの居室も、少しずつ改善していきました。
1. 突っ張り棒とカーテン(220円 + 550円)
1Kなので、キッチンと居室の間に仕切りがありません。料理の匂いが部屋に充満するのが悩みでした。
突っ張り棒にカーテンを吊るして、簡易的な仕切りを作りました。完全に匂いを遮断できるわけではありませんが、かなり軽減されました。視覚的にも、空間が区切られることで、部屋が広く感じられるようになりました。
2. ウォールポケット(110円 × 2個)
リモコン、スマホの充電器、メモ帳など、小物が散らかりがちでした。壁に取り付けられるウォールポケットに収納することで、机の上がすっきりしました。
3. ケーブルボックス(220円)
テレビやパソコンの配線がごちゃごちゃしていて、見た目が悪く、掃除もしにくい状態でした。ケーブルボックスに配線をまとめたことで、見た目もすっきり、掃除も楽になりました。
4. 観葉植物と植木鉢(各110円 × 3セット)
無機質だった部屋に、小さな観葉植物を置きました。緑があるだけで、部屋の雰囲気が柔らかくなり、癒やされます。水やりという小さなルーティンも、生活にリズムを与えてくれました。
5. 壁に貼れるフック(110円 × 5個)
バッグや帽子を置く場所がなく、いつも床に置いていました。壁にフックを取り付け、吊るす収納に。床が片付き、部屋が広く感じられるようになりました。
合計:1,870円。
部屋が整理され、居心地が良くなりました。以前は「早く引っ越したい」と思っていたこの部屋が、今では「意外と悪くないかも」と思えるようになりました。
トイレ・洗面所の改善
最後に、トイレと洗面所です。
1. 突っ張り棒と収納カゴ(110円 + 110円)
トイレに収納がなく、トイレットペーパーのストックを置く場所に困っていました。便器の上の空間に突っ張り棒を2本設置し、その上に収納カゴを置きました。デッドスペースが、収納スペースに変わりました。
2. 洗面所収納ケース(110円 × 3個)
歯ブラシ、歯磨き粉、化粧品など、洗面所周りの小物を収納。洗面台の上が片付き、毎朝の身支度がスムーズになりました。
3. 鏡用くもり止めシート(110円)
古い洗面所の鏡は、シャワーの湯気ですぐに曇っていました。くもり止めシートを貼ることで、クリアな視界を保てるようになりました。
4. 掃除用スポンジとブラシ(各110円)
今まで掃除道具がなく、適当に拭く程度でした。専用の掃除用品を揃えたことで、掃除がしやすくなり、清潔を保てるようになりました。
合計:880円。
トイレと洗面所が清潔で整理され、毎日使う場所が快適になりました。
変化の総括
投資額と効果
シャワーカーテンから始まった「小さな改善プロジェクト」。
3ヶ月かけて、少しずつアイテムを揃え、少しずつ部屋を改善していきました。
総投資額:5,280円
この金額は、引っ越し費用(約30万円)の、わずか1.76%です。
でも、得られた効果は計り知れません。
- 毎日の床拭き作業がなくなった
- キッチンが使いやすくなり、自炊が増えた
- 部屋が整理され、探し物をする時間が減った
- 清潔な空間で、気持ちよく過ごせるようになった
- 「このアパート嫌だな」という気持ちが、「意外と快適かも」に変わった
何より大きな変化は、私の考え方でした。
「環境が悪いなら、大きな決断(引っ越し)をするしかない」
と思っていた私が、
「小さな工夫で、今の環境を改善できる」
という考え方に変わったのです。
友人の反応
ある日、友人が部屋に遊びに来ました。
「あれ?なんか雰囲気変わった?」
「うん、ちょっと色々改善してみたんだ」
シャワーカーテン、キッチンの収納、玄関のシューズハンガー、居室のカーテン仕切り。一つひとつは小さな変化ですが、全体として見ると、部屋の印象が大きく変わっていました。
「前は『早く引っ越したい』って言ってたよね。今は?」
「今は、ここでもうしばらく暮らせるかなって思ってる。むしろ、この部屋を自分好みにカスタマイズしていくのが楽しくなってきた」
友人は笑いました。
「全部100均で揃えたの?すごいね。リフォームとか大げさなことしなくても、こんなに変わるんだ」
「うん、最初はシャワーカーテンだけのつもりだったんだけどね」
そう言いながら、私は最初にシャワーカーテンを買った日のことを思い出しました。
あの日、半信半疑で買った550円のシャワーカーテンが、こんなに大きな変化のきっかけになるなんて、想像もしていませんでした。
