贈り物手帖
~~旅・バイク・酒好きの元教員が語る旅日記シリーズ(1)~~
清川千歳
大分県臼杵市はキリシタン大名の大友宗麟が、日本文化とキリスト教文化の共存で発展させた城下町。そんな城下町では珍しい食文化にあふれている。実は臼杵には大阪のように「臼杵の食いだおれ」と言われてきた歴史があるのだ。
臼杵は豊富な魚介類である海の幸だけでなく山の幸にも恵まれている。大分市のスーパーなどに並ぶ魚介類は新鮮そのもので大分県外からの転勤者たちは一様に鮮度に驚くが、臼杵の漁村出身者は「大分市の店頭に並んでいる魚介類の鮮度の悪さに食べる気がしない」とまで言うほどである。 臼杵市の代表的な食といえば「きらすまめし」。そして、大分のパエリア「黄飯(おうはん)」だろうか。近年の臼杵市では「汁物」「煮物」を「おうはん」と称していることが多いが、そもそもは「黄飯」に添えた「黄飯汁」を「おかやく」とよんでいた。「黄飯」があまり作られないようになると、「黄飯汁」の「おかやく」のみを「おうはん」とよぶようになったようだ。今風にいえば、牛丼セットの牛丼がなくなり、セットについていた「豚汁・おしんこ」のみになったにもかかわらず「牛丼セット」とよんでいる、というところだろうか。
さて黄飯は「くちなしの実」の汁で炊く飯である。そのため色が黄色い。そして黄飯汁は油で炒めた豆腐に大根、ごぼう、人参を加え、焼いた白身の魚をまるごと入れ煮込む。魚の骨は煮込んだ後に取る。他の地方で言うけんちん汁に近い味付けにし、葱も加える。魚はといえば、刺身でも食せる新鮮な魚を惜しみなく使う。大根、ごぼうも今でいえば「ブランド野菜」とも言えるような質の高い野菜たちである。
臼杵の魅力はふぐだけではない。臼杵の食文化がもっとスポットライトを浴びてほしいと願っている。