贈り物手帖
山梨県の名前の詩
仁義なき富士山戦争【山梨県VS静岡県】といった富士山の裏表に関する論争がメディアでも多く取り上げられます。
しかしながら、富士山には顕著な普遍的価値があり、山梨県と静岡県が手を取り合って富士山世界文化遺産登録への道のりを歩んだのです。
そして富士山ナンバー。日本初の県をまたいだ同一ナンバーで、都道府県名や地域名(富士山地方は山梨にも静岡にも存在しません)、江戸以前の地名ですらありません。静岡県富士市および山梨県富士吉田市などにまたがり、管轄する運輸局も中部運輸局静岡運輸支局と関東運輸局山梨運輸支局。
芸術の源泉でもある富士山は、その美しい姿から古くは万葉集、竹取物語、古今和歌集、伊勢物語にも描かれ、松尾芭蕉や与謝蕪村の俳句、夏目漱石や太宰治の文学作品にも取り上げられています。浮世絵では、葛飾北斎が『冨嶽三十六景』、歌川広重が『不二三十六景』『東海道五拾参次』など様々な場所から見た富士山を描いていますが、美しさは、山梨側、静岡側など関係ないのでしょう。ゴッホやモネなどにも影響を与え、横山大観もまた、多くの富士山の作品を残しています。
そして最後に、富士山8合目以上の土地は、静岡県富士宮市の富士山本宮浅間神社の神社有地であり、山頂は山梨、静岡どちらの県にも属さない「境界未定地」となっています。富士山は、日本古来の山岳信仰と密教等が習合した「修験道」の道場であり、信仰の対象とされてきました。神は誰にも属さないということでしょうか。