「あなたの髪、すごく傷んでるわね」
美容院で、美容師さんにそう言われた日のことを、今でも覚えています。
鏡に映る自分の髪。パサパサで、毛先は枝毛だらけ。ツヤなんて、どこにもない。まるで、乾燥した藁のよう。
「どんなヘアケアしてます?」
「えっと…シャンプーとトリートメントは、ドラッグストアの普通のやつで…」
「ブラシは?」
「プラスチックの、100均の普通のブラシです」
美容師さんは、少し困ったような顔をしました。
「髪が傷んでる原因、たぶんそれも一つだと思います。プラスチックのブラシは、摩擦で髪を傷めちゃうんですよ。できれば、木の櫛とか、獣毛ブラシとか使った方がいいです」

「木の櫛…ですか」
「はい。特につげ櫛とか、おすすめですよ。髪に優しいし、静電気も起きにくいし」
その日の帰り道、私はスマホでつげ櫛を検索しました。
「つげ櫛、3,000円〜5,000円…え、高い…」
学生の私には、櫛に3,000円も出すなんて、考えられませんでした。トリートメントならともかく、櫛にそんなにお金をかけるべきなのか、悩みました。
でも、髪の傷みは気になる。何かしたい。
そんな時、ふと思い出しました。
「そういえば、100均にも木の櫛ってあったような…」
次の日、ダイソーに行って、探しました。そして、見つけたんです。
「つげ櫛風 ヘアコーム」110円。
パッケージには「木製」と書いてありました。本物のつげの木かどうかは怪しいけれど、少なくともプラスチックよりはマシだろう。そう思って、試しに買ってみることにしました。
これが、私と100均のつげ櫛との出会いでした。そして、この110円の櫛が、私の髪との向き合い方を、大きく変えてくれることになるのです。

最初は半信半疑だった
家に帰って、パッケージを開けました。
薄い茶色の木製の櫛。手に取ると、軽い。でも、安っぽい感じはしません。
歯の間隔は細かすぎず、粗すぎず。ちょうどいい感じ。
「これで本当に髪が変わるのかな?」
半信半疑でしたが、とりあえず使ってみることにしました。
お風呂上がり、ドライヤーで髪を乾かした後、この櫛で髪を梳かしてみました。
「あれ?」
最初に気づいたのは、静電気がほとんど起きないこと。
今まで使っていたプラスチックのブラシだと、髪を梳かすたびに、バチバチと静電気が起きて、髪が顔にまとわりついていました。
でも、木の櫛は違いました。スーッと、滑らかに髪を梳かせます。静電気もほとんど起きません。
「これ、いいかも…」
たった110円の櫛でしたが、最初の使い心地で、「これは当たりかもしれない」と思いました。

毎日使い続けて、気づいたこと
それから、毎日この櫛を使うようになりました。
朝起きて、寝癖を直す時。お風呂上がり、髪を乾かした後。出かける前の身支度。
一日に何度も、この櫛で髪を梳かす習慣がつきました。
そして、1週間ほど経った頃、気づいたんです。
気づき①:髪を梳かす時間が気持ちいい
今まで、髪を梳かすことは「作業」でした。寝癖を直すための、面倒な作業。
でも、つげ櫛で梳かすようになってから、変わりました。
木の�櫛が頭皮に当たる感触が、心地いい。優しくマッサージされているような感じ。
髪を梳かしながら、「あぁ、気持ちいいな」と思えるようになりました。
朝の忙しい時間でも、この櫛で髪を梳かす数分間は、なんだかリラックスできる時間になりました。
気づき②:髪がまとまりやすくなった
使い始めて2週間くらい経った頃、友達に言われました。
「なんか最近、髪の調子良さそうじゃない?」
「え、そう?」
「うん、前よりまとまってる気がする。何か特別なことした?」
特別なことと言えば、櫛を変えただけ。シャンプーもトリートメントも、今までと同じ。
でも、確かに言われてみれば、髪がまとまりやすくなった気がしました。
朝のスタイリングも、以前より楽になっていました。櫛で梳かすだけで、髪が自然にまとまる。
「櫛を変えただけで、こんなに変わるんだ…」
正直、驚きました。
気づき③:抜け毛が減った
これが一番びっくりしたことですが、抜け毛が減りました。
以前は、プラスチックのブラシで髪を梳かすたびに、ブラシに絡まった髪の毛がたくさん取れていました。お風呂の排水溝も、すぐに髪の毛で詰まっていました。
でも、つげ櫛に変えてから、抜け毛が明らかに減りました。
櫛を使った後、歯に絡まる髪の毛が、以前の半分くらいしかない。
おそらく、プラスチックのブラシは、摩擦が強くて、健康な髪まで引っ張って抜いてしまっていたのだと思います。
木の櫛は、髪に優しく、必要以上に引っ張らないから、抜け毛が減ったんでしょう。
気づき④:頭皮の調子が良くなった
つげ櫛で髪を梳かすと、適度に頭皮が刺激されます。
これが、マッサージ効果になっているようで、頭皮の血行が良くなった気がしました。
以前は、頭皮が痒くなることがよくあったのですが、櫛を変えてから、それもなくなりました。
頭皮環境が整えば、生えてくる髪も健康になる。そう聞いたことがあります。
もしかしたら、この櫛を使い続けることで、これから生えてくる髪も、今より健康になるかもしれない。そう期待しました。
気づき⑤:髪に向き合う時間が増えた
一番大きな変化は、これかもしれません。
今まで、髪は「適当に扱っていいもの」だと思っていました。寝癖を直すのも適当、ドライヤーも適当、櫛も適当。
でも、つげ櫛を使うようになってから、髪を丁寧に扱うようになりました。
朝、鏡の前で、ゆっくり時間をかけて、髪を梳かす。一本一本、丁寧に。
髪を梳かしながら、「今日の髪の調子はどうかな」「少し乾燥してるかな」「ツヤが出てきたかな」と、自分の髪の状態を観察するようになりました。
これは、美容にとって、とても大切なことだと思います。
自分の体や髪と向き合う時間を持つこと。その変化に気づくこと。
110円の櫛が、私にその習慣を与えてくれました。

100均のつげ櫛、本当に「つげ」なの?
使い始めて1ヶ月くらい経った頃、ふと疑問に思いました。
「これ、本当につげの木なのかな?」
パッケージには「木製」としか書いていません。「つげ櫛」ではなく、「つげ櫛風」という表記。
調べてみると、本物のつげの木は希少で、本つげの櫛は数千円から数万円するそうです。
110円の櫛が、本物のつげの木であるはずがない。
おそらく、つげに似た別の木材、もしくは竹材を使っているのでしょう。
「じゃあ、効果ないんじゃないの?」
最初はそう思いました。でも、考え直しました。
大事なのは、「つげかどうか」じゃなくて、「木製かどうか」なんです。
木製であれば、プラスチックに比べて、
- 静電気が起きにくい
- 髪への摩擦が少ない
- 頭皮への刺激が優しい
これらのメリットは、ちゃんとあります。
実際、私の髪は確実に改善されました。抜け毛も減ったし、髪もまとまりやすくなった。
「本物のつげじゃなくても、十分効果があるじゃん」
そう思いました。
もちろん、本物のつげ櫛には、もっと素晴らしい効果があるのかもしれません。木の質感も、使い心地も、耐久性も、きっと110円の櫛とは比べ物にならないでしょう。
でも、「まずは木の櫛を試してみたい」「つげ�櫛がどんなものか知りたい」という人にとって、100均の櫛は最高の入門編だと思いました。
リスクはたった110円。それで、木の櫛の良さを体験できるなら、試す価値は十分にあります。

100均つげ櫛の使い方、私なりのコツ
数ヶ月使ってみて、私なりの使い方のコツが見えてきました。
①最初は毛先から、少しずつ
これは、どんな櫛でも同じですが、特に木の櫛の場合は大切です。
いきなり根元から梳かすと、絡まった髪が引っかかって、櫛が折れる可能性があります。
まず毛先から、少しずつ絡まりを解きながら、徐々に根元に向かって梳かす。
この方法なら、髪も傷めないし、櫛も長持ちします。
②濡れた髪には使わない
木の櫛は、水に弱いです。
お風呂上がりの濡れた髪には使わず、ドライヤーである程度乾かしてから使うようにしています。
濡れた髪を梳かす時は、目の粗いプラスチックのコームを使って、乾いてから木の櫛に切り替える。
この使い分けが大事です。
③定期的に掃除する
使っているうちに、櫛の歯の間に、髪の毛や皮脂、ホコリが溜まってきます。
私は週に一度、使い古しの歯ブラシで、櫛を掃除しています。
歯の間を丁寧にブラッシングして、汚れを落とす。たまに、薄めた中性洗剤で洗うこともあります。
清潔な櫛を使うことが、髪の健康にもつながります。
④オイルでメンテナンス
木は乾燥すると、ひび割れることがあります。
私は月に一度、椿油を少し櫛に塗って、メンテナンスしています。
柔らかい布に椿油を少量つけて、櫛全体を優しく拭く。これだけで、木が乾燥から守られて、長持ちします。
110円の櫛だから適当に扱うのではなく、丁寧にメンテナンスする。そうすることで、愛着も湧いてきます。
⑤持ち歩き用と自宅用を分ける
私は今、100均のつげ櫛を2本持っています。
一本は自宅用。もう一本は、ポーチに入れて持ち歩き用。
外出先で髪が乱れた時、サッと取り出して梳かせるので便利です。
110円だから、複数買っても負担にならない。これも、100均ならではのメリットです。

高級つげ櫛と比べてみたくなった
100均のつげ櫛を半年ほど使い続けて、すっかり気に入りました。
でも、ふと思いました。
「本物の高級つげ櫛って、どれくらい違うんだろう?」
興味本位で、デパートの櫛専門店に行ってみました。
そこには、職人が手作りしたという、本つげの櫛が並んでいました。価格は、3,000円から、高いものだと10,000円以上。
「ちょっと触ってみてもいいですか?」
店員さんに許可をもらって、手に取ってみました。
まず驚いたのは、その重み。100均の櫛とは、明らかに違う重厚感。
そして、手触り。滑らかで、しっとりとしていて、手に吸い付くような感触。
歯の一本一本も、丁寧に磨き上げられていて、先端が丸く加工されています。これなら、頭皮を傷つける心配もありません。
「試しに使ってみますか?」
店員さんが勧めてくれたので、自分の髪で試してみました。
「……すごい」
正直、感動しました。
櫛が髪の中を滑るように通っていく。引っかかりが全くない。まるで、髪が櫛を吸い込んでいるような感覚。
そして、梳かした後の髪のまとまり。たった数回梳かしただけで、髪にツヤが出て、しっとりまとまりました。
「これが本物のつげ櫛か…」
確かに、100均の櫛とは、レベルが違いました。
「いかがですか?」
店員さんが聞いてきました。
「すごくいいです。でも…ちょっと高いので、今日は考えさせてください」
私は、何も買わずに店を出ました。
100均と高級品、どちらを選ぶべきか
家に帰って、改めて100均のつげ櫛を手に取りました。
デパートで触った本物のつげ櫛と比べると、やっぱり質感は劣ります。軽いし、歯の磨きも粗い。
「やっぱり、本物を買った方がいいのかな…」
そう思いかけました。でも、ふと考え直しました。
確かに、高級つげ櫛は素晴らしい。でも、100均の櫛でも、私の髪は十分改善されました。
抜け毛は減った。髪はまとまりやすくなった。静電気も起きなくなった。
これは、事実です。
「今の私には、この櫛で十分なんじゃないか」
そう思いました。
もちろん、将来余裕ができたら、本物のつげ櫛を買ってもいい。それは、自分へのご褒美として。
でも、今は、この110円の櫛で十分幸せです。
大切なのは、道具の値段じゃなくて、それをどう使うか。どれだけ丁寧に、髪と向き合うか。
その姿勢があれば、110円の櫛でも、十分に効果は得られる。
私は、そう結論づけました。
つげ櫛をきっかけに、ヘアケア全体を見直した
100均のつげ櫛を使い始めてから、髪への意識が変わりました。
「櫛を変えただけで、こんなに髪が変わるなら、他にも何かできることがあるんじゃないか」
そう思って、ヘアケア全体を見直し始めました。
シャンプーの方法を変えた
今まで、適当に頭を洗っていましたが、正しいシャンプーの方法を調べました。
- シャンプー前に、ブラッシングで汚れを浮かせる
- シャンプーは頭皮を洗うもの、髪そのものをゴシゴシこすらない
- すすぎは、シャンプーの2倍の時間をかける
- トリートメントは頭皮につけず、毛先を中心に
こうした基本を守るだけで、髪の調子が変わりました。
ドライヤーの使い方も変えた
今まで、ドライヤーは「とにかく早く乾かす」ためのものだと思っていました。
でも、正しい使い方を調べると、違いました。
- まずタオルドライで、優しく水分を吸い取る
- ドライヤーは髪から15cmくらい離す
- 根元から乾かして、徐々に毛先へ
- 最後に冷風で仕上げると、キューティクルが締まる
これを実践するようになってから、髪のツヤが増しました。
ヘアオイルを取り入れた
お風呂上がり、髪を乾かす前に、ヘアオイルをつけるようになりました。
最初は高いヘアオイルを買おうかと思いましたが、ここでも100均を活用。
ダイソーの椿油、110円。
これを、毛先を中心に少量つけてから、ドライヤーで乾かす。
ドライヤーの熱から髪を守ってくれるし、乾かした後の髪がしっとりまとまります。
夜、寝る前のケアも始めた
寝ている間、髪は枕との摩擦でダメージを受けます。
それを減らすために、
- 寝る前に、もう一度つげ櫛で髪を梳かす
- 軽く三つ編みにして寝る(髪が絡まるのを防ぐ)
- 枕カバーを、摩擦の少ないシルク素材に変える(これは奮発しました)
こうした小さなケアの積み重ねが、髪質の改善につながりました。
